第3回<マンタをたずねて1600km~国営沖縄記念公園(海洋博公園):沖縄美ら海水族館を訪問>

第3回:沖縄美ら海水族館のこだわり、独自の技術、そしてこれからについて】

なるべく自然を再現した形での展示にしたいというこだわりから、水槽の環境は海と同じようにしています。まず、天井からは太陽光が降り注ぎます。また水族館目の前の海から新鮮な海水が供給されるシステムを採用しており、大水槽は1日に16回海水が入れ替わり、水温も外海と同じように変化します。こうすることによって、生物たちは水槽にいても四季の変化を自然に経験することができます。実はこの季節の変化がマンタの交尾のタイミングにも影響しています。飼育下での繁殖の成功にはこのような細かいことの積み重ねが重要だということです。

改めて佐藤さんにお話しを伺いました。マンタを水族館に運ぶのは非常に大変な作業だったそうです。もちろん、その大きさ自体も大変ですし、輸送中の状態をモニタリングする必要があります。また、いきなり水槽に入れるのではなくて、海に大きな生け簀を作り、餌など人工的な環境に少しずつ慣れてもらう必要があります。こうして最終的に水槽の展示へと進めていくのです。

館内見学の後は、あらためて佐藤さまにお話しを伺いました。

水族館では館内での研究と野生環境での研究とをバランスよく行っているそうです。また、独自の技術や装置を開発しており、サメの人工子宮などは沖縄美ら海水族館だけの新技術です。また、高度な技術を持つ人材も多く、世界ではじめて水中を泳ぐ海洋生物から採血に成功した専門の女性スタッフも在籍しています。水族館では毎月、健康状態を把握するために血液を取ったりエコー検査をしたりしています。そのため、彼女の技術は欠くことができません。

数々の繁殖に成功している沖縄美ら海水族館の最終ゴールは、水族館で飼育・繁殖させて生物を増やす技術を開発し、将来絶滅に瀕した種を野生に復帰させることだとのこと、同時に課題についても説明して下さいました。「飼育下で繁殖した生物が海に戻って自然界の生物と混じった際に、それぞれの個体群の遺伝子の撹乱が起きないようにすることが今後の研究で重要です。」

2022年11月に開館20周年を迎える沖縄美ら海水族館ですが、今後はインターネットを活用したイベントをさらに増やして、沖縄に来なくても世界のどこにいても参加できるようにして、できるだけ多くの方に水族館の素晴らしさを体験してもらえるような取り組みをしていきたいとのことでした。メタバース「沖縄美ら海水族館」もすでに開設したそうです!

カールF. ブヘラはマンタが健全に生きていくために持続可能な海の未来と、多様性に富む海の生態系を守ることの重要性を意識しています。この理解を深めるため、マンタの生活史についての知識や、沖縄美ら海水族館が取り組む活動について情報を共有することは、重要な一部です。マンタについての研究は時間がかかるので、息の長いサポートは研究者として嬉しいとのお話がありましたが、カール F. ブヘラは今後も継続的にマンタトラスト、そして沖縄美ら海水族館を管理する沖縄美ら島財団とのコラボレーションに取り組んでいきたいと思います。

大水槽をゆったりと泳ぐマンタや魚たち。水族館での活動から海洋環境の保護へと繋ぐことは、未来に向けて重要な取り組みです。

さて、水族館出口の横にあるお土産ショップ「ブルーマンタ」には、カール F. ブヘラのダイバーズウォッチが展示されています。「黒潮の海」を優雅に泳いでいたブラックマンタをモチーフにした「パトラビ スキューバテック ブラックマンタ」です。
カール F. ブヘラにとって、マンタは社会的意義のある活動への参加を意識させる大切なモチーフです。スキューバテックを腕に着ける時、または時刻を見る時に、時計の裏側や文字盤に描かれたマンタが目に入りますが、その瞬間、海や環境のことを少しでも思い出すきっかけになればと思います。沖縄美ら海水族館の美しい生き物たち、そしてそこで働く方たちの情熱に今回直接触れたことで一層その思いを強くしました。

ブルーマンタにはカール F. ブヘラの時計やカタログが置かれています。

また、これらの記事では紹介しきれない水族館の興味深いエピソードの数々が、佐藤さまを始めとする沖縄美ら島財団の方たちによって本になりました。サメに関する専門的なお話や水族館の知られざる日常などについて、私たちにも分かりやすく書かれていますので、ぜひご一読くださいませ。

著者:佐藤圭一、冨田武照、松本瑠偉
発行:産業編集センター
定価:本体1800円+税

第2回目はこちらからご覧になれます。第2回<マンタをたずねて1600km~国営沖縄(海洋博公園):沖縄美ら海水族館を訪問> – Carl F. Bucherer (scubatec.jp)
第1回目はこちらからご覧になれます。<マンタをたずねて1600km~国営沖縄記念公園(海洋博公園):沖縄美ら海水族館を訪問> – Carl F. Bucherer (scubatec.jp)